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「着いたぞ」
しばらくふわふわと浮かんでいるような気分で歩いていた。
トキさんの声にはっとすると、目の前にひっそりとしたお店があった。
いつの間にか手は離れていた。
そのことを少し残念に思うと、トキさんはもう店に入ろうとしていたので首を振って切り替えた。
「来てやったぞ」
「おおトキ!久しぶりだな」
迎えてくれたのは大入道の店主さん。
大きな声で店自体も揺れる。
「そちらはよもつさんの看板娘だね?」
「あ、はい。なみと言います」
「うんうん、いい名だ。
私は転(うたた)トキとは古い友人でね、赤ん坊の頃から面倒をみていたんだよ。
小さい頃の話聞きたいよね?
そうだなー。あ、あれなんかどうかな。ほら、カエル……」
「さっさと要件を言え。ただでさえこっちは忙しいんだ」
トキさんは転さんの話を遮るように言った。
昔の話を聞かれると恥ずかしいのかな。
彼の様子を窺うと、じろりと睨まれた。
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