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「いや。ただ屋敷から出てきたとこかと思ったんだ」
こんなことなら
引き留めておくんだったと。
「とにかく、中へ戻ろう」
駄々っ子を宥めるように
椎名さんは僕の肩を抱いた。
「震えてるじゃないか」
「……平気だよ」
彼の手を払いのけ
よろめきながら今来た道を戻る。
フラフラするのは
薬が効いてきた証拠。
最近じゃ己の体温を奪って
心の安定を取り戻す。
「ねえ、本当に征司お兄様だった?」
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