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突如私の機械の身体が言葉を発した。
『危機を察知しました。攻撃形態にトランスフォームを開始しますか? 一回百万円です』
「ひゃ、百万円ですって!? あの守銭奴メガネめ! えーい、もう自棄だわ、トランスフォームを開始して!」
『了承。トランスフォームを開始します』
私の機械の身体が光り輝きながら変形しだした。まるで醜い表皮を隠していくかのように、手足は細くしなやかに、くびれはキュッとして美しく、そして清らかな胸部へと、私はスマートでありながら色気のあるボディへと生まれ変わった。
「なにこれ、ちょーかわいいじゃん!」
ガラスに映ったスタイリッシュな自分の姿に私は目を奪われた。うれしくなってはしゃぎ回って飛び上がり、変な動きやかわいらしいポーズをたくさん決めた。
あれよあれよとしているうちに、重機ロボットが体制を立て直して、私の背後から忍び寄った。
重機ロボットの強烈なたたきつけを私はすぐさま察知して、身を翻して華麗にかわした。
「時間稼ぎをしてろって言ってたわよね? 今ならできる気がするわ!」
私は軽やかに宙を舞い、回転しながら重機ロボットへ蹴りを落とした。
可憐な容姿からは想像がつかないほどのパワーが炸裂して、重機ロボットは紙くずのように吹き飛んだ。
エレベーターの壁がぐしゃりとひしゃげた。
「な……、なんなんだお前!」
重機ロボットの火炎放射器が再び火を噴いた。
しかし私が腕を煽ぐと、炎は瞬く間に風の中へ消え失せた。
「火遊びなんかして、いけない子!」
私はすっと詰め寄って、重機ロボットを蹴り上げた。
重機ロボットが天井や側壁に当たってボールのように跳ね回る。
私はそれが楽しくなって、重機ロボットが跳ね返ってくる度に、スカッシュでもするかの如くパンチやキックをお見舞いした。
そしてちょうど良い頃合いを見計らって、私は重機ロボットを踏ん付けるようにとどめの蹴りをくらわせた。
「地球へ、帰れーーーっ!!!」
ぼろぼろになっていたエレベーターのカゴの底が突き破れ、私は重機ロボットもろとも超音速で落下した。
空に一筋の光を描きながら、隕石が衝突したかのような破壊力で海上ステーションの基盤に激突し、重機ロボットはクレーターの中で大破した。
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