カレンダー

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恭子のオフィスは、ガランとして冷たい。 デスクを片付けて、帰ったはずなのに、昨日と違う。 どこが違うのか? 恭子は、奇妙な違和感を持って、手帳を探した。 ああ、あった。今日の会議で使う資料と手帳。 そのとき。 右手に、何か触った。硬い紙? 厚みがある。 ハガキくらいの大きさだった。 そんなものを置いた覚えはない。 「滝沢さん、会議の時間ですよ」 デザイナーの佐々木真歩が呼びに来たので、 そのまま、フロアを出る。 何だったんだろう? 新しいフェアのプレゼンは、スムーズに終わり、 席を立とうとしたとき。 隣の佐々木真歩が、手にしたカレンダーを、恭子に見せるようにつきだした。 卓上カレンダー。 ん、今は4月なのに、5月が出てる。 赤で大きく5日のところに、丸い印がついている。 心臓がドキドキして、呼吸が苦しい!! それなあに? 真歩に、何故か聞けない…。 朝、デスクにあったのは、このカレンダーだ。 大きさも、厚みも。 今日は、恭子と大田建人が付き合いだして、一年目の記念日。 京橋のイタリアンレストランで、予約した席で待っていると、間もなく、建人がやって来た。 朝、見たときと変わらない…。 はずなのに。 どこか、変? 「どうした?このネクタイ、いいだろう。気に入ってるんだ。恭子も、これくらい、趣味がいいと、品があるのにな」 「朝と違う…。どうして!なんで、記念日なのに、あたしかあげたネクタイしないの?」 「うるさいなあ、いちいち。いいだろう!!」 ゾッとする。 そんな言い方…。 建人は、何もなかったかのように、パスタを食べている。 思い出したように。 「そうそう。5月の連休は、無理だわ。急に予定が入っちゃって!! プリウスどうした? 5日の朝には、納車されるんだろう? 」 えっ、冗談だと思った。 「何言ってんの。もう、恭子とは、会ってやんない。これきりだ」 怒って食事の途中で、帰ってしまう建人。 カレンダーに、書いてあったのは、分かる。 5日。真歩の誕生日。 プリウスでドライブ。
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