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「さすがに士官用の宴会場って違うんだな」  クニが300畳は優にある広々した宴会場をあきれたように見つめていた。踏むと靴底まで沈みこむ濃紫の絨毯(じゅうたん)が床一面に敷きこまれ、高い天井からはシャンデリアが放射状にさがっている。透明なクリスタルに、今では製造中止になった白熱電灯の暖かな光が透けていた。  御馳走を乗せたテーブルには氷の彫像がそびえていた。半分は裸の女性で、残りは最新の戦闘機や爆撃機、それにミサイル巡洋艦をかたどったものだ。 「軍人の趣味って、男っぽいというより、男の子っぽいね」  ジョージが皮肉そうにつぶやく。タツオは先ほど目にした3Dホログラムの将軍たちを思いだしていた。胸にはぴかぴかに輝く勲章をさげていた。ああしたものをいつも胸につけているのはどんな気分だろう。タツオは無意識のうちに胸についた進駐軍少尉の階級章をつまんでいた。ぶっきらぼうにテルがいう。 「おい、後ろが詰まってる。いくぞ」
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