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「『止水』の話をするなら、天童家がなにをもって女皇にお仕えしてきたのか、教えてもらえませんか」  ジョージがこちらにうなずきかけてきた。なにか情報を渡すなら、代わりになにか別な情報をもらう。近衛四家とは対等なつきあいをするという姿勢を示す必要があった。 「ええよ。噂になってるような恐ろしい技を天童がもっている訳でもないからね。まあ、戦争のときには呪術師(じゅじゅつし)が欠かせなかったというのは、タツオくんもよく知っているよね」  進駐官養成高校の軍事史では決して触れることのない、もうひとつの戦争の歴史だった。古代から近世にかけて、呪術師は会戦に欠かせない重要な役割を担っていた。戦争を始めるのによい幸運な日時を決定し、軍略に参画し、敵を呪詛(じゅそ)で呪い殺し、味方の幸運を祈る。指揮官の軍勢には優秀な呪術師が帯同し、会戦のたびに呪詛の儀式を執(と)り行っていた。
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