1.お試し期間の始まりは、

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「冷める前に食べましょうか」 (このっ・・・こんのっ!!) くすぶる感情をぶつけるように、巴は普段よりかなりしつこくビビンバをかき混ぜてから、2つの小皿に取り分ける。 「どうぞ」 「ありがとう」 しばし黙々とビビンバを口に運んでから、巴は副店長に訊ねた。 「なんで会長はそんな条件つけたんですか?」 「良いスーパーマーケットを作るには、まず顧客の中心たる女性の心を掴むべし、というのが祖父の持論なんだ」 「なるほど」 確かに来店者のほとんどは主婦層だ。一理ある。 「だが、俺は女心というものに疎い。壊滅的なレベルでだ。現に君もガッカリさせてしまっただろう?」 今さら取り繕ったところでどうしようもないだろう。 巴はコクンと頷いた。 「・・・否定はしません」 巴の反応をすんなり受けいれた副店長は、ビールをひと口飲んでから独り言のように呟く。 「30過ぎてからそれとなく特定の相手を作るように、と圧力はかけられてたんだが・・・まさかこんなあからさまな手段に訴えて来るとは思わなかった」 ここでひとつの疑問が生じた。 推定身長180cmオーバー、そこそこイケメンのメガネ男子。 国立大学卒、仕事の出来る未来の幹部職。 しかも祖父はローカルスーパーとはいえ経営者。 条件だけ見ればかなり高スペックな副店長に、今まで恋人のひとりふたりいなかったのだろうか?
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