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入場前にもう一度、二人は身だしなみを整えられた。
慎一郎は左手に白い手袋を持ったままエスコートするよう付添い担当者に指導されている。
一方の巴は、ベールを下ろされて初めて気づいた。
「結構視界悪いですね」
「そうなのか?」
周囲の景色に白くもやがかかったようで、隣にいる慎一郎の顔もぼやけて見える。
「はい、慎一郎さんのエスコート頼みなんで宜しくお願いします」
「了解。・・・それじゃあ、行こうか」
巴は差し出された慎一郎の右腕をとり、二人はバージンロードに向かって一歩を踏み出す。
「皆さま拍手でお迎え下さい。新郎新婦の入場です!」
朝日慎一郎、35才。
桜庭─改め朝日巴、29才。
お試し期間の終わりに、待っていたのはハッピーエンド。
そして今日が、二人で歩む新しい生活のスタート地点─
【・・・and they lived happily ever after】
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