1.お試し期間の始まりは、

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「そのカニ分荷(ぶんか)するんですか?」 温度マイナス20度。 決して広くはない冷凍庫内に二人きり。 通路に台車を入れられるよう、冷凍食品が入った段ボール箱を棚に上げながら巴は当たり障りのない質問を投げかける。 「ああ、明日駅前店の副店長が車で引き取りに来るまで置いておいてくれ」 「かしこまりました」 その時、巴の隣で同じように冷凍食品の段ボール箱を整理していた副店長がボソッと呟いた。 「・・・確か君、交際相手はいなかったよな?」 (え?今そんな流れだったっけ?) 唐突すぎる質問に戸惑った巴は、冗談まじりに切り返す。 「新手のセクハラですか?」 眼鏡が曇ってよく見えないけれど、しまったという表情に変わったような気がする。 次の瞬間、彼はお詫びの姿勢のお手本のような、角度45度で頭を下げた。 「・・・申し訳ない。そういう意図はなかった」 ここまで真剣にお詫びされるとは思っていなかったのだが。 (まるで誤作動起こしたロボみたい) 白く曇った眼鏡が余計にロボット感を演出している。 なんだかおかしくなってしまい、思わず巴は吹き出した。 「プッ・・・アハハハ、すみません、冗談のつもりで言ったんです。そんな真面目に受け取らないで下さい」
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