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先ほどから見るからに不機嫌そうな巴の様子を窺っていた副店長が、ようやく口を開く。
「会長命令だ」
「・・・・・・ハァ!?」
(だから端的に結論だけ言わないで!)
仕事中は話に無駄がないので助かるのだが、今この状況においてはイライラする事この上ない。
「そう喧嘩腰になられると説明しにくいのだが」
目上の人に失礼だろうがなんだろうが知ったことか。
そんな心境だった巴だったが、その冷静な一言にすうっと頭が冷えた。
(確かに、こんな態度じゃ説明しにくいよね)
そもそも自分のキャラじゃないから、と職場の人達に少女マンガ好きをひた隠しにしてきたのは巴自身。
当然、男性からの告白に憧れ続けてきた事だって、副店長は知らないのだ。
「・・・そうですね、すみません」
素直に反省の言葉を述べた巴を見て、副店長は安堵のため息をつく。
「ありがとう。・・・着任時に俺の祖父がスーパーはなまるの会長だって事は話したよな」
「・・・はい、聞いてます」
副店長は国立大学卒業後、一度全国に店舗がある大手スーパーに就職し、8年働いてからスーパーはなまるに転職している。
着任時の挨拶で、会長の孫だからといって特別扱いしないで欲しいとも述べていた。
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