4.気づくな危険!乙女の恋心

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慎一郎の思わぬ一言で、巴の脳内に先日バックヤードで目撃した二人の様子が蘇る。 「先日うちの店にいらっしゃってましたよね」 「ああ、彼女を知っていたのか」 「直接面識はないですけど、大石チーフが教えてくれました。とても優秀な方だって」 凛とした美人で、スタイルも良くて、仕事の出来る女性。 しかも、同期。 聞くのは怖い。けれどどうしても気になる。 「もしかして、以前お付き合いされてた相手って・・・」 慎一郎は苦笑する。 「・・・まったく、君は本当に察しが良いな」 (やっぱり、付き合ってたんだ) その事実ひとつで、一瞬にしてどん底に突き落とされたような気持ちになった。 「なんとなく、お似合いだなって感じたので・・・」 巴は貼りつけたような笑みを浮かべて、自ら傷口に塩をぬる言葉を口にした。 「彼女とは、思考が似ていたからこそ続かなかったんだろう。今も良きライバルだとは思っているけれど・・・それだけだ」 ただのライバルだと言うなら、何故そんなにも優しい表情で、あの女性の事を語るのだろう? (そうか、私・・・) 冷蔵庫で一度は考えるのを止めた理由に、巴は気づいてしまった。 (認めたくなかったんだ) 人柄も知らない他の誰かを、妬ましく思うどうしようもない自分を。 ─恋がこんなにも、幸福とはほど遠い感情をもたらすのだということを。
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