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5月。
ゴールデンウィークも終わり、母の日に向けた売り場への切り替えを終えた頃。
「業務連絡、イチヨン便です」
その放送を聞いた巴はスイングドアの前で一礼し、売り場からバックヤードに移動する。
同じように、各売り場を担当する社員達が次々と発注用のパソコンや携帯情報端末が並ぶ端末室に集合した。
「お疲れ様です。昼礼(ちゅうれい)始めます」
毎日午後14時に行われる昼礼、今日は店長が休みなので、副店長の慎一郎が仕切り役だ。
「本日の予想客数ですが、雨のため1900人に下方修正します。また明日は晴れ予報なので、予想客数は2300人に修正して下さい」
昼礼では必ず今日明日の予想客数が報告される。
この予想客数をもとに、各売り場の担当が商品の繰り越し在庫数と明日の入荷数を計算し、発注するためだ。
「最近副店長の客数予測の精度がますます上がってるよな」
昼礼の後、隣のパソコンで発注している青果の大石チーフが巴に話しかけてきた。
「そうですね、もともと精度高かったのがさらにキレを増してる気がします」
(慎一郎さんがほめられてる!)
つい口許が緩みそうになった巴は、あえてパソコンの画面から目を離さずに答えた。
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