第1章

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 俺の一日は、サンドウィッチから始まると言っていい。ノーノー、サンド『イッチ』じゃない。サンド『ウィッチ』だ。日本人は、ダヴリューの発音も出来ないのかね?  焼きたての胚芽パンにトロトロのモッツァレラチーズと家の畑で取れたレタス、スーパーの新鮮トマト、ちょっとお高いベーコンを挟んで、薔薇の描かれたナプキンの上で優雅に口へと運ぶ。その味と言ったら、この世界の全ての幸せを堪能しているようだ。  そして一日の終わりもやはり料理だ。ミート・アンド・ポテイトゥズという、何ともフレッシュで香ばしく、優しい味のディナーだった。デザートはコーン・アイスクリーム。高級チョコの味が漂っていたね。実にデリシャスだった。これには感動したよ。  つまり、俺の一日は料理に始まり、料理に終わるということだ。料理と共に過ごし、感動を分かち合った日は今にも忘れない。  クラスの奴らも、次第に俺を『先生』と呼ぶようになり、頭を垂れるようになった。  俺の味覚は、神から授かったものである。生まれつきからのこの旨味と渋み、その他もろもろの味を感じることの出来る有能な舌。  きっと成人した後は大舞台のホテルかレストランかでようやく本領を発揮するのだろうが、それまでには時間がかかる。ああ、義務教育の期間は早く終わらないだろうか。自分の活躍する姿を思い浮かべると何とも素晴らしい。  しかし、将来有望な俺が、今日、絶望的な事件に遭遇した。 「最悪だ……。この世の終わりだ……。」  俺の片手には、空になったゼリーカップが握られていた。
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