第2章 賢帝レオン

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アバロンに戻ったレオン一行は、宮殿に戻るため、城下町の大通りをまっすぐ歩いていた。 当然、多くの人の目に付く。 「ご苦労様です!レオン様、ジェラール様!」 入り口を守る衛兵は大きな声と、規律正しい敬礼で一行を迎えた。 「レオン様だ!」 「お帰りなさい、レオン様。」 「わーい、れおんさまー」 街ですれ違う人々の目線がレオンに集まり、彼の帰りを喜んでいた。 レオンはにこやかに笑い、手を振って、その声に答える。 家臣に絶対の信頼を受け、民に愛されるその姿こそ、レオンの真に誇るべき、皇帝の資質であり器。 そして何より、彼らこそがレオンの一番の力なのだ。 「父上、お帰りなさいませ。」 玉座の間にてレオンを迎えたのは、彼の第一子であり、ジェラールの兄、ヴィクトールだった。 レオンの外出中、皇帝代理として玉座に座り、アバロンを守っているのだ。 レオンが帰還し、玉座の間に入ると、ヴィクトールは父に玉座を返すべく立ち上がり、レオンがそこへ座した。 「ジェラール、ケガはないか?」 自分や父のような武勇を持たない弟を心配して、ヴィクトールはジェラールを気遣う。 「大丈夫だよ。兄さん。父上の足手まといにならないようにするのがやっとだけどね。」 ジェラールはヴィクトールの気遣いに感謝しつつ、自分はまだまだだと兄に話した。 「弟は戦いよりも学問の方に才能があるようです。無理に戦闘に連れて行かずともよいではありませんか。戦いは私の務めです。」 ヴィクトールはレオンに言及するも、レオンの考えは歪まない。
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