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「おっ、ジェラール様じゃないですか。」
「ヘクター。」
声をかけてきたのは、フリーファイターのヘクター。
基本的にはフリーの傭兵だ。
しかし、正規兵に勝る程の実力を持ち、大剣を用いた遊撃においては、あのジェイムズすら上回る。
アバロンで雇われてはいるが、そうでなければ荒くれの傭兵団に属していたであろう、攻撃的な性格だ。
「またレオン様についてモンスター討伐に行ったんですか?ジェラール様は、お部屋で学問でもやっていればいいんですよ。」
ヘクターは優秀な戦士であるレオンに憧れて、志願した兵の1人だ。
ここにはそうした者も少なくない。
しかしヘクターは特にその傾向が強く、腕自慢の自分を差し置いて、剣もまともに扱えないジェラールが、レオンと共に戦場に赴く事を快く思っていないのだ。
「しかし、私は少しでも父上のお役に立ちたいのだ。」
「人には向き不向きがありますからね。まあ、ケガして泣きベソかかないように気をつけてくださいよ。ははっ!」
あからさまな挑発を繰り返すヘクターだが、ジェラールは思う。
彼の言うことも、もっともだと。
現に自分はレオンの足手まといでしかない。
「コラッ!ヘクター!」
「げっ!アンドロマケー!」
ヘクターに絡まれているジェラールを発見して駆けつけたのは、彼と同じフリーファイターのアンドロマケーだった。
女性であるにも関わらず、体は大きく、ヘクターに並ぶ屈強な戦士だ。
ワイルドで姉御肌の彼女にはさすがのヘクターも適わない。
「あんた、ジェラール様になんて口利いてんだ。あんまりふざけてると縛り首じゃ済まないよ!その前に、あたしにぶっ飛ばされてぇってんなら…」
穏やかではない。さっきまでヘラヘラしていたヘクターの顔色も、だいぶ青ざめている。
「いいんた、アンドロマケー。いざという時に、身を守る事もままならない、私も悪いのだ。」
「ジェラール様も、そんな事でどうします!レオン様の血を引いてらっしゃるのですよ!」
アンドロマケーは激しくジェラールを叱責する。
フリーファイターは他の兵と違い、遠慮がない。
「アンドロマケー。その時は、君に守ってもらうさ。」
「はぁ…。だめだこりゃ…。ホラ、ヘクター。行くよ。」
アンドロマケーはジェラールの言葉に、半ば呆れた様子で、ヘクターを豪快に掴み、引きずって行った。
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