第3章 吸魂の悪鬼

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レオンとジェラールが出立してからしばらく。 ヴィクトールは玉座の間で皇帝代理を勤めていた。 「ヴィクトール様。」 「どうした。」 伝令兵が玉座の間に伝書を持ってきた。 「武器開発室から、新しい武器の開発提案書が届いております。お目を通して頂き、よろしければ許可印をお願いいたします。」 「わかった。預かろう。」 ヴィクトールは提案書を預かり、目を通してみるが、その内容に驚いた。 提案書 新しい大剣を開発したいと思います。 つきましては40万クラウンほど使わせていただけると… 「40!?40万クラウンだと!?おい!大臣!大臣はいるか!」 あまりの金額に目を丸くしたヴィクトールは、財政を管理する大臣に相談しようと呼び立てた。 「ど、どうなさいました!ヴィクトール様!?」 ヴィクトールのあまりの剣幕に、慌てて大臣が駆けてくる。 「新しい武器の開発に40万クラウン必要だと開発室が言ってきた。いくらなんでも、これは予算をかけすぎではないか?」 話を聞く大臣は、大金を耳にしてもあまり動じる様子はない。 「それでしたら、いつも通りだと思います。先の開発にも、同等の予算がかかっておりましたから。」 「そんなもの…なのか?」 「はい。そんなものかと。」 大臣は慣れた様子で、さらりと答える。 「帝国の金庫の蓄えはいかほどだ?」 「60万クラウンほどです。」 つまり、これを許可したら金庫がだいぶ空いてしまうということだ。 「わかった。呼び立ててすまなかった。下がってよい。」 「では、また何かございましたらお呼びくださいませ。」 大臣は金庫のある管理室に戻っていった。 「はぁ…これは父上に通さないとさすがに許可できんな。私の一存でこんな大金は動かせん。開発内容にだけは、目を通しておくか。」 開発の提案があったのはクレイモア。 現在、帝国で兵装として広く使用されている大剣の改良型だ。 素材を変更することで、強度を保ち、より刀身を鋭く、サイズを大きくすることで、飛躍的に威力を増したものだ。 これが完成し、量産に成功すれば、帝国の戦力は増すだろう。 開発室も、伊達に高額な資金を要求しているわけでもないようだ。 「しかし、開発費用が高い。これは今しばらく保留にしておこう。」
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