第1章 始まりの詩

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-アバロン共和国・酒場- 仕事帰りの人達で賑わう、とある酒場。 華やいだその空気は、今あるこの平和の象徴のようだった。 その中で私は、かつての戦いの日々を思い出す。 初代から脈々と受け継がれてきた、長きにわたる戦いの記憶が今、鮮明に蘇ってくる。 淡いオレンジ色の明かりに照らされた店内で、大勢の客が酒盛りを楽しんでいた。 その中に、ひときわ風変わりな男が1人。 帽子を深く被り、薄い緑と黄色で装飾された外套に身を包んでいる。 男は酒を楽しむでもなく、店の片隅に、佇むように座っていた。 ふと、少年が男に声をかける。 男はにっこり笑うと、少年と共に店の中央へ。 外套の中から竪琴を取り出すと、それをひと鳴らした。 ポロロン! 美音一閃。がやがやとした店内は一瞬にして静まり、人々の視線は男に注がれた。 男はそのまま演奏を続ける。 美しい音色が、オレンジ色の明かりと共にその場を包み、ここに物語が始まる。
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