友人の結婚。

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──怖い。人を好きになるのが、怖い。 『山瀬! 加藤、結婚するらしいぞ』 突然かかってきた1本の電話。 「へぇ、そう……」 『なんだよその反応。高校ん時お前と加藤が一番仲良かったろ?』 ズキ。 電話越しの友達はとても楽しそうに話している。昔と何も変わってない。 「そう、だったっけ?」 今まで忘れたくても忘れられなかった過去。 ……もう少しで忘れられる気がしていたのに。 そんなの、自分を守るための幻影みたいなものだが。 『そうだろー! だって加藤も言ってたぜ?』 “加藤”という名前に胸が痛む。 ズキ、ズキズキ。 『山瀬に一番最初に言いたかったって!!』 何かが崩れる音がした。 『そういやまだ聞いてなかったんだな本人から』 「ごめんちょっと今体調悪いから切るね報告ありがとうじゃあ」 食い気味にそれだけを早口で伝えると、即座に電話を切った。 震える身体を抑えるように壁に凭れ、しゃがみこむ。 「……加藤」 実際自分が口にしてみるとやけに生々しく感じて血の気が引く。 ──忘れたかった過去。忘れられなかった過去。 「どうして……っ」 口から零れた言葉は音になったのかもわからない掠れた声だった。
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