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そんな田口からはすぐに返信は来て、
”先に行っててくれー”
との事だった。
「うん、今日も一緒に呑む相手は見つかった。ふふっ、楽しみ……」
この楽しみというのはもちろん田口と一緒に呑むという事ではない。
奏さんに会える事が今、私の胸の中を最高潮に弾ませている。
都会の冬の風を全身に受け、飲食店が連なる道を神崎先輩のように美しくはないけれど、一人歩く。
寒さに我慢出来なくて、巻いていたカシミアのマフラーに顔を半分埋めながら目尻だけはとことん垂れていた。
「うわっ。しまったぁ~、マフラーにグロスついた」
浮かれすぎてしっかりとメイク直しをした時につけたグロスがマフラーについてしまう。
そんな事にちょっとショックを受けながらも大通りでタクシーを拾い、奏さんが経営するバーへと私は向かった。
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