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「……こんばんは」
昂る緊張から手が少し震えているのが分かる。
そして男性にしてはちょっとトーンの高い涼しい声で返事をしてくれた。
「あっ、百合さん。いらっしゃいませ。今日もお疲れ様です」
か細い私のこんな声でも拾ってくれ、極上の笑みを向け労りの言葉をかけてくれる人。
恋焦がれていた相手の奏さんが、バーカウンターの向こうから声をかけてくれた。
その優しい声の響きだけで全身に柔らかさが戻ってくるみたい。
「百合さん、一人?あとから田口さんもいらっしゃいます?」
「そ……そうです。あとで田口も」
「田口さんがいらっしゃるまで僕でよかったらお相手しますよ?よかったらカウンターにどうぞ」
田口が来るまでとは言わず、ずっとお相手を願いたいくらいだ。
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