危ない彼は私の片想いの人

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「どうぞ、ピンキーサワーです。百合さん、いつも最初はこれですよね?」 スツールに座った途端、いつも最初にオーダーするカクテルをすぐに用意してくれた。 ピンキーサワーの朱色のように私の顔も一瞬で染まっていく。 チラッと上目で見た奏さんの顔は満足そうに微笑んでいて、綺麗に上がった口角に釘付けになった。 「あ、ありがとうございます……」 「ははっ。お礼を言うのはこちらの方ですよ」 そう言うと奏さんは僅かに身を乗り出し、私と少しだけ距離を詰める。 奏さんから軽く香ってくる甘いリキュールの香りだけで酔ってしまいそう。 それを誤魔化すために周りに視線を逃がすけれど、今日は本当にお客様は少ないのか、テラス席に1グループ、テーブル席にも3組ほどのカップルがいるだけでカウンターには誰もいなくて、他の従業員達も明日の仕込みを始めているスタッフもいた。
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