危ない彼は私の片想いの人

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そんな私はカウンターにいる奏さんを独り占め状態。 こんな贅沢な空間と妄想の酔いにさらに酔ってしまいそうになるから、まだ一口も喉を通していないピンキーサワーを慌てて口に含んだ。 そして奏さんの声が耳に穏やかに届いてくる。 「いつもありがとうございます。 こうして絶えずに楽しそうに通ってくれる百合さんのようなお客様のおかげで、僕も毎日楽しく仕事が出来るんですよ」 「あっ……それ、わかります。私も同じような感覚ですから」 「同じ接客業同士、通じる物があるんですね。今日はどんなお客様がいらっしゃったんですか?聞きたいな、百合さんのお仕事の話」 ふわっと笑い、私の話なんかを興味深そうに聞いてくれるという彼の思いやりの波に呑み込まれそうになる。 やっぱり反則だと思った。 この顔でこの聞き上手さを持ち合わせているのって。 仕事に悩んでいる女なら簡単に落ちてしまいそうだ。
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