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ぶんぶんっと頭を振るけれど、もう極度の疲労に襲われた私の身体と頭にはこれ以上何かを思い出し、考えるっという行為自体が無理だった。
「もう……今日はいいや。もう寝よう……」
今にも倒れそうになりながら、二本の鍵と名刺を大切に鞄の内ポケットに入れた。
勝手口とこの扉の鍵を預けてくれたという事は、私は信用していい人物だっと思っていてくれてるんだろう。
自分の家には他人は絶対に招かないっと言いながら、店の鍵は預けるだなんて本当に変わった人だ。
「……でも、何だかんだ言っても優しかったな……」
一時でも惚れた弱味からか、少し優しくされればいい気分になってしまっていた。
最後、「おやすみ」っと言ったあの穏やかな口調とさり気ない癒しの笑みを思い浮かべる。
浮かんでは落ち着きながらも弾む胸。
不幸のどん底にいようとも、その微笑みを思い浮かべれば心は癒されていた。
「電気ストーブも暖かい……」
奏さんが用意してくれた電気ストーブの前で、コートの上にさらに持ってきたダウンジャケットを毛布代わりにして私は深い眠りについたのだった。
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