いつも傍に

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 ――あの最悪な再会から一年。  この一年の間、二人はたくさん迷い、悩んだ。そして、たくさん傷つけ、傷つけられ、涙も流した。  けれども、そうすることで得ることができた、恋焦がれていた相手の温かな心――  康介は横に立つ翔悟に笑いかける。 「おれって、幸せもんだよな」 「どうしたんです。突然」 「だってさ、こんなに好きだって想える相手が傍にいるんだぞ。それって、すげー、幸せなことじゃない?」  素直な言葉を口に出し、翔悟の手を握り、指を絡めていく。 「な、何してるんですかっ! ここ、学校ですよ」  学校ではあくまでも同僚として通す意志があるのか、虚勢をはる翔悟。乱暴に手を振り払い、ふいっと顔を逸らす。しかし、康介からの不意打ちのせいか、彼の顔は赤く染まり、照れているようでもあった。 「そろそろ……行きますね」  顔を合わせることなく康介に背を向け、窓から離れていく。しかし、ふいに立ち止まったかと思うと、振り返ってきた。 「水瀬くん」 「ん? どうした」 「……俺も、……俺も幸せです」 「翔悟っ!」  一年前、自分を蔑み突き放していたが嘘に思える優しい笑顔。その笑顔に康介は、翔悟に負けないくらいの愛おしさを全面に出した笑顔を返す。  遠ざかっていく翔悟の背を見送り、窓の外の桜を眺める。ジンワリと胸の奥に広がる温かさに幸せを感じた康介は、鼻唄混じりの浮かれた足取りで歩き出した。  これからも続く幸せを、強く願う気持ちを胸に抱きながら。 【終わり】
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