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むかしむかし、数百の戦場を飛び回り、数千の敵を倒して、数万の仲間を助けたドラゴンがおりました。
しかし、度重なる年月と傷のために、勇猛だった竜はいつしか弱ってしまいました。鎧のようだった鱗もはげて抜け落ち、勇気も希望も忘れてしまったのです。
世界は薄情なものでした。『役立たず』になった彼を捨て、彼の栄光を、優しさを消し去り、共に目指していたはずのものを、すっかりなかったことにしてしまいました。
誰もいない冷たい洞窟の中で、彼は毎晩泣きました。自分の弱さにおびえ、世界の寒さにこごえて叫びました。そのあまりの寒さに、火山のように熱い彼の瞳からしたたった涙は、地面に落ちるまでに凍り付き、彼のまつ毛に巨大なつららを何本も作ったのでした。
そんな日々が何百年も続いた、ある日のことでした。
ひとりぼっちだったドラゴンの前に、一人の妖精が現れたのです。
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