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炎彬はポケットから携帯を取り出し、液晶をタッチする。 すると、通りを歩く深瀬の後ろ姿がそこに映し出された。 「……」 何か口にしながら看板を蹴り倒すと、何事もなかったかのように帆波食堂へと入っていく。 「嘘だろ……」 「彼が出てくるのをずっと待っていたんですよ。お店に迷惑をかけられませんからね。舞ちゃんがいなかったからか、すぐに出て来てくれましたけど」 「……っ」 「これは器物破損の証拠になりますよね。このまま警察に届けますけど」 「まじか……」 フンっと片方の口角を上げ、うっすらと笑みを浮かべながら深瀬を見下ろす炎彬の瞳が怖すぎて。 「…炎彬、すごい」 舞ちゃんは僕と見合ったまま、こくこくと静かに頷いた。 「……だったら何だよ」 深瀬は頭から湯気でも出そうな勢いで炎彬を睨みつけると、じろりと舞ちゃんへと視線を向けた。 「訴えるなら訴えてみろよ。その代わり、おまえもちゃんと弁償しろよ」
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