透明人間の恋

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彼の存在すら知らないが)のは全くの偶然だった。たまたま、1限目の始業時間を間違えたため仕方なくA公園で朝寝をしていたところ。彼女をみかけたのであった。  K君の一目ぼれであった。元々惚れっぽいK君であったが今度は今までと違うと今回も思った。今回も運命的なものを感じ、恋愛が成就しなかったら死んでもいいと思ったのだ。  しかし、元来内気で引っ込み事案なK君はいつも好きな女の子ができても声すらかけられずに他の男に横取りされたり、卒業とともに離れ離れになったりと悲哀を味わってきた。  しかし今回は違う。ある能力を得たのだ。  それは透明人間になることであった。最初はからかわれているのかと思った。大学の教室に入ってもクラスメイトは無反応。あいさつをしても周りをきょろきょろするだけ、最初は不快だった。  しかし、これは自分をかついでいるわけでなく、本当に気が付かないように思えてきた。K君は不思議に思った。  決定的だったのはトイレに行って、手洗いをしようとしたら鏡に自分が写っていないということを目の当たりにした時だった。その時の衝撃は忘れられない。  最初はどうしよう自分はどうなるんだと思ったものであった。  しかし、その心配は杞憂であった。段々、透明であることに慣れ、おまけに姿を現し元に戻る方法を発見したのだ。それは、脳にある程度の衝撃を与えることだった。理屈はわからない。たまたま転んで頭を打ったことで発見したのは幸運だった。  それによって透明人間であることの恩恵を享受することができた。  といってもK君は小心者であったため、友人を驚かしたり、ただで映画を観たりと小さなことにしか使っていなかった。しかし、ついにはじめて大きなことに使おうと決心した。  それはあの娘と結ばれることだ。  彼が考えたことはまず、彼女のことをすべて知ることからだった。透明人間になれば彼女のことを細部もらさず知ることができるだろう。好きな食べ物、趣味、タイプの男性、嫌いなものまで。  そこで彼女のことをすべてしってしまう。これで彼女の好みをすべて把握すれば会話も弾むし彼女の心を思いのまま操れるだろう。  出会いのきっかけも簡単に作れる。これも彼女の私物を拝借して、落とし物ということで届ければOKだ。  まず、手始めに彼女の普段を知るため透明人間になって後をつけた。念のため少し距離を置きながら後ろ姿
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