第1章

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「最悪だ…この世の終わりだ…」 人間の七割は水分でできている。 私はその内の三%を、失恋の度に失っているんだと思う。 鏡に移った自分の顔は、昨日の泣き崩れた化粧のままだった。 インターフォンが鳴った。 最悪のタイミングだ。居留守を使うことを、決めた。 「ナギさーん。いることは分かってますよ」 馴染みのある声が聞こえた。 彼なら、この酷い顔の有り様で出迎えても大丈夫だと思い、玄関に向かった。 ドアを開けると、目の前には彼ではなく透明なケースが飛び込んできた。 あまりにびっくりして、状況が把握できなかったが、よくみるとDVDが入った透明なケースが、彼の手の中で三枚並んでいた。まるで、トランプのババ抜き見たいに。 「選んで」 DVDの向こう側で、彼の声が聞こえた。 「じゃあ、これ」 私、失恋したんだよね。なのに、選んだDVDをみると、ダイハードのタイトルが目に入った。 「ふふふ。なにこれ?」 「何って、今からみるんだよ!クリスマスといえば、ダイハードだろ!」 私は確かにクリスマスイブの前日にフラれた。 でも、マクレーンは、臆することなく、突然のテロリストと戦いに挑んだ。 彼と、ダイハードを見終わって、自分の悩みの小ささを知った。
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