第一章 おふざけの後始末

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 その中の目玉事業と言えるのが、市の自然資源を利用した観光業の発展だった。 「中心地の観光客を明智に呼ぼう」をテーマに掲げ、市東に広がる緑地公園を中心としたテーマパーク化を打ち出し、最終的には全市的に自然を侵食することなく発展的な街作りをテーマとする都市開発を進める運びと相成った。県外、果ては国外まで手を伸ばした企業の誘致にも成功し、飛ぶ鳥を落とす勢いで市の業績は右肩上がりを続け、明智市とその市長の名は一気に全国へと広がった。  そうとなれば、市長のお膝元である市役所の中にも変化が起こった。観光発展都市化を目指すため、時を同じくして新たな課が誕生する流れとなった。それが中島陽人の所属する明智市『地域活性課』だった。  先んじて行われた全国的な成功事例を参考に、市長の肝煎りで作られた同課は地元テレビ局を始めとしたメディアで大々的に取り扱われ、すぐに注目の的となった。やり手市長による次の手腕を期待する市民の声を背中に受け、華々しい船出を迎えた、はずだった。  しかし中を開けてみれば、なに一つ取り柄のない街を大々的にアピール出来るような優れた人材も無く、いるのはごく普通の一般職員。地方公務員として地元に根付いた善良な市民ではあるものの、市長の右腕として働く存在すら充てられない"お役所"は、お決まりの"なあなあ採決"を下すことになった。  こうして『たった四人』だけの、  地域活性課が誕生する運びとなった。
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