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課の面々と言えば、他部署で窓際同然に追いやられていた蟹江を課長とした組織で、主任の中島、そしてその下に二人という簡素なものだった。
蟹江が課長ということで勘付いた者もいるだろうが、役所に勤める面々はすぐに気付いた。『地域活性課』などと言ってみたものの、それはいわゆる"島流し"と同じ意味なのだろう、と。なにも知らない市長の手前、「新たな課は作れません」と言えない上役連中は、どうせすぐに忘れると決めつけ、一曲ある人間を押し込むことを考えたのだった。
大規模な開発案件は既存の課で分散して受け持ち、その他の雑務を地域活性課へ投げ捨てるといった構図もすぐに出来上がった。反論することなくそれを受け入れた蟹江を見てか、以下三名も「あぁ、そういうことか」とそれを受け入れた。伊藤などは「毎日定時で帰れる」と喜んでいたものだった。
しかし勢いとは不思議なもので、そこでまた想定外のことが起こった。
翌年、ニ0一八年、夏。
市の最東に位置する明智市森林公園が開園百年を迎える記念式典を実施することが決まり、その準備を役所全体で取り仕切ることになった。しかし大きな仕事が地域活性課に回されるはずもなく、面々が「今回も雑用か」と諦めかけていたところ、一つこれまでにない仕事がもたらされた。
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