第一章 おふざけの後始末

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   1  ニ0一七年、春。  中部地方は多いに賑わっていた。外資系大手ブロックチェーンが開業したテーマパークを皮切りに、観光客を一気に取り込もうと躍起になり、各社がプロモーションをうっていた。片や観光業、片や製造業、片や新規のイベントを立ち上げたりと、稀に見る賑わいを後ろ盾に、周辺各市も滅多に上げない重い腰を上げていた。大手銀行の破綻や大震災以降、暗い話題ばかりが先行していた空気を払拭するよう、半ば狂乱気味な騒動にまで発展した盛り上がりは、中島の住む明智(あけち)市をも巻き込み、一気に拡大していた。  明智市は賑わいの中心地である名古屋市から約ニ十キロ東に離れた場所にあり、主に通勤のベッドタウンとして名のしれた街である。市の西側は名古屋へ通勤するサラリーマン世帯を軸とした住宅街が広がっているが、反対に東側は大規模な森林と農地が残っており、市民の心のオアシスとなっていた。しかし言ってみればこれといった特徴の無い街で、これまでに話題といった話題があるはずもなく、ごく落ち着いた普通の街だった。  しかしこの年の春、任期満了に伴って行われた市長選を切っ掛けに、明智市は大きく変貌を遂げることとなった。  かねてから明智市に貢献し続けてきた地元企業、明智開発の社長である明智光太夫(あけちこうだゆう)の息子、文助(ふみすけ)が当選したことにより、大々的な発展都市を目指すと宣言。市民の誰もがただの二世と舐めてかかる中、思いもよらぬ手腕を発揮した文助は、あれよあれよの内に市政の改革を進め、半年足らずで明智市に変化をもたらした。
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