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眠る直前含め、本当に記憶がないらしい千夏さんが、俺の言葉に焦りをみせていた。
けれど、そんな様子がおかしくて、俺はあえて意地悪をした。
「それは……教えられません。あ…ご馳走さまでした」
「えー! ちょ、なんだよ、それ……!」
その後、何回か聞かれたけれど、俺は一向に教える事はなかった。
その代わりに……。
「千夏さん……」
上半身起こしてた千夏さんの身体を再び押し倒し、顔の横に手をついて、その上に乗った。
「ちょ、お前、いきなり……なん、だよ……」
ジッと見つめれば、直ぐに顔が赤くなってく。
いつもの千夏さんだ。
さっきの軽く酔って寝ぼけてたのも可愛いけど、いつものこの千夏さんも、すごく可愛い。
「み、見てんじゃねーよ」
言いながら、顔をそむけた千夏さん。
すると、今度は俺の視線の先に、真っ赤な耳が映る。
そこへの距離を縮め、触れる直前で言う。
「……いただきます」
そして、目の前の耳を噛む。
――そう、さっき千夏さんにされたみたいに。
「ンッ……」
さっき……必死で耐えた上に、突然の邪魔がはいって、中断させられましたからね。
だから、たっぷりと味わわせてくださいね……!
こうして、今年のバレンタインもまた、忘れられそうにない、新たな思い出が出来た。
≪終わり≫
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