268人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「あ……そろそろキますね」
「え……?」
学校を出て直ぐ、壮平が空を見上げて言った。
だから、オレもそれにつられて空を見上げた。
「……まだ、降らねぇんじゃねぇの?」
見上げた空は……雨雲がいくつかあったけど、直ぐに降り出しそうにない。
「いや……キますよ」
確信めいた揺らぎない言い方に、オレはちらりと隣の壮平を見た。
すると、視線に気付いたのか、壮平がオレのほうを見て、ニッコリと笑った。
「だって、雨の匂いがしますからね」
「……何それ?」
思わず、その笑顔にポーッと見蕩れてしまったオレは、壮平が言った事が、理解出来なかった。
「ほら、雨が降る少し前って、微妙に雨の匂いがするんですよ。千夏さん、知らないんですか?」
「し、知るかよ」
ずいっと顔を近づけられたので、思わず顔を逸らした。
「でも、そういう所は、千夏さんと一緒なんですよ」
「は?」
けれど、続けられた壮平の言葉が、更に意味不明になる。
何でオレが、雨と一緒なんだよ!
天邪鬼だとか、気まぐれだとでも言いたいのか?
最初のコメントを投稿しよう!