甘さの葛藤

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「え、そうですか? 俺も……」 食べますよ――と言おうとしたけれど、1種類ずつしかなかったのを思い出して、言葉を飲み込む。 「悪いな、壮平。これ1個しか無かったわ」 「ですよね……」 はははと笑いながらも、このタイミングで、千夏さんの口の中に残ってるチョコを、舐める様にキスしてしまおうかという考えが頭をよぎる。 でも、まだ来たばっかりだし……と思うと、なかなか行動に移せなかった。 「でも、これもお酒入ってるみたいだから、食べてみろよ」 「んっ……」 そわそわしてると、俺の気も知らず、千夏さんが別のチョコを俺の口に放り込んで来た。 「確かに……強め、ですね……」 甘い物が苦手な俺にとっては、口に広がるビターな味とお酒の味が混ざってるこのチョコは、美味しかった。 けれど、確かにちょっとお酒が強めかもしれない。 「だろ? けど美味いなー」 俺の感想を聞いた後、千夏さんは上機嫌で、その後2つほど食べていた。 「千夏さん、コーヒーとかいります? チョコだけだと、口の中甘いでしょ?」 「ん……そだな。てかさー、壮平の手、大きくね?」 「え……?」 千夏さんにコーヒーを入れに、立ちあがろうとして、机に手をつけば。 その手をとって、千夏さんが自分の手と重ねる。
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