超妄想シリーズ16

3/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 そう公言することにした。  最初は気持ち悪がられたが、オタク文化が確立している日本ではひどい迫害には遭わなかった。軽い人種差別はあったものの、距離を置かれるだけで済んだ。 同じ偏見の目で見られたとしても、同性愛好者だと思われるよりはずっと立場がましだった。  そうなると問題はつきあう友達だ。  当然ながら圧倒的に比率の高い「デブ・キモメン・陰険・モテない」の三拍子そろった野郎たちとつるむことになる。  男は好きだが、オレの好みは筋肉隆々のかっこいいアスリート系だ。  元々、アニメオタクすら仮の姿だ。話も合わない。  次第に彼らに次第についていけなくなったオレは、誰からも距離を置くようになった。ましてや、道端の石コロ程度の存在でしかない興味の対象外の女子を友達にする気持ちすら持てなかった。  細身で細目。成績も中の上程度をキープし、授業中はわかっていても回答しない。誰の印象にも残らないように過ごしてきた高校時代。  グラウンドで練習するラグビー部の先輩の姿を横目で見ながら帰るのが唯一の楽しみだった。セックスじゃなく、ただ好きな人のことを考えてせつなくなったり、絶対に叶わないならと好き勝手な妄想をしたりして一人の時間を過ごすのが好きだった。  SNSで「男子の恋人募集」なんてのを見ても書いてあるのはたいていセックスの要望だけ。オレは男とセックスしたいんじゃない。好きな人と愛し合いたい。ただそれだけだ。  そんなこんなで大学に入学してもオレの生活は変わらなかった。それでもいくぶんか解放された気分にはなれた。高校ほど無理に人と関わらなくてよくなったからだ。  一人に慣れると、人間関係が濃くなるほどに息苦しさを覚える。寂しくないといえば嘘になるが、隠れゲイがバレる危険に比べればつらくない。  それに、案外快適だ。一人ならマッチョメンズのダンスDVDを見ては好きなだけニヤニヤできる。  それなのに、オレは人類最後の男としてこの世に残ってしまった。  もうおしまいだ。  「子孫存続のため」と称してオレはあいつらオンナどもから精子バンク扱いを受け、種馬として生きて行かなくてはならない。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!