超妄想シリーズ16

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 あわててドアを閉めたオレに、ウメさんはドアを力強く叩きながら、  「ちょっと、アンタ、ドアを開けなさいよ」  「ふざけんな! オレの頭越しにいろいろ勝手に決めやがって! 条約とかなんだよ、一体」  「人類最後の男を守るにはスピードが肝心だったんだよ。いい加減、開けとくれ。かよわい老人に無駄な労力使わせるもんじゃないよ」  ドカンドカンとドアを蹴飛ばしながらウメさんが叫ぶ。  最後にはドアに穴を開けた。  なんつー元気な老人か。  数時間後、オレは強行突破してきたウメさんと直接対話をした。  最初、絶滅寸前である男性が人権を無視したやり方でオンナどもの好き勝手にさせられるのを守ろうとしてくれたらしい。  「なんなら国の天然記念物にでもしようかと思ってねえ。でも、アンタ、ホモだっていうじゃないの。厚労省もリスクのある遺伝子を拡散させたくないから、今度はアンタを危険視しちゃって。  なんだか怪しい雲行きになってきたから思い切ってあたしが提案したのよ。冷凍保存してある本物の精子バンク、それも優生遺伝子の方を無料で妊娠したい女性たちに提供したらどうかって。  状況が状況だから、即刻全世界で承諾してもらえたわよ。厚労省はアンタにすっかり興味を失ったみたい。  それで、調べてみたら世界から消えたのは男だけじゃなかったの。嫉み、僻み、妬み、嫉妬心、偏見、差別意識の強い女たちもだったのよ。  それから、性欲が強かったり強欲だったり意地の悪い女たちも。残ったのは人との調和を大事にする優しい女性、レズビアンカップル、心穏やかなシングルマザーたち。  これってなんだか神様の粋な計らいみたいだわよねえ?」  数時間のうちにこれだけのことがわかったと知ってオレはただひたすら驚くばかりだった。  というのか、このバアちゃんは何者なんだろう。本当にただのNPO法人の一員か? 「で、アンタ、このままいくと一人取り残されるだろう。パートナーもできなさそうだし。挙句、待ってるのが孤独死なんて可哀想になってねえ。  それで、どうだい。ウチで働かないかい。あたしの秘書の一人になりなよ。ウチは政府と仕事してるから給与面は保証するよ」
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