気付けなかった罪の代償

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*** 「やばい、緊張してきた……。本当に入らないとダメか?」 「ちょっと、しっかりしてよ! ちゃんと挨拶に来たいって亮一くんも言ってくれたでしょ?」 俺は今、里沙の実家の前にいる。 ここに来るのは、3年前に里沙と結婚を決めたとき以来だ。 もう里沙を傷つけないと決意したあの日、里沙から久しぶりに実家に顔を出してほしいということを言われ、これを機に里沙の両親との関係も大切にしていこうと俺は考えた。 しかし、いざ家の前まで来ると途端に足が重くなる。 3年間全く接しようとしてこなかったことに、今さらながら気まずさを憶えた。 「ただいまー! 帰ったよー!」 こちらの心の準備も待たずに、里沙は玄関を開け勝手に中に入って行ってしまった。 仕方なく、その後について俺も家の中へ上がる。 「あらー! 亮一さん、久しぶりじゃない」 最初に現れたのは、里沙の母親だった。 今日は何を言われるかとビクビクしていたこともあり、明るく気さくに話しかけてくれたことが嬉しかった。 「ど、どうも。ご無沙汰しています」 「ささ、どうぞこちらへいらして」 母親にリビングへ案内される。 記憶の中では、こんなに明るい人ではなかったはずなのだが……。 リビングに入ると、里沙と、その正面には里沙の父親が座っていた。 「あの、ご無沙汰しています」 「おー、亮一君久しぶりだな。元気にやっていたかね」 「ほら、こっち」と里沙に呼ばれ、その隣に俺は座る。 「はい。仕事の方も忙しいですが、それでもなんとかやっています。」 「そうか。まあ、体には気を付けろよ」 キッチンの方から母親が戻り、テーブルに5つのお茶を運んだ。 「そうよ、体には気をつけるのよ。健康で、長生きするのが何よりも大切なんだから」 「ありがとうございます。いつも、里沙に支えてもらっています」 そういうと、里沙は少し恥ずかしそうな素振りを見せる。 その様子を、里沙の両親は微笑みながら見ていた。 「亮一くん、いきなり何言うのよ、もう……。ちょっと、お手洗い行ってくるね」 里沙は少しはにかみながら席を立った。 里沙の歩いていく方に目を向けると大きな本棚があり、その中にアルバムらしきものを見つけた。 「あの、あそこにあるのってもしかして里沙のアルバムですか?」 「ええ、そうよ。里沙の幼いころからの写真が入っているわ。見たい?」
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