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勇ましく入ってきた本多重次は、弾けたような笑顔で声を張り上げた。
「殿っ! 随分とご成長あそばれましたな」
どっかりと座り込む重次に元康は逃げるように家成の背に隠れた。その様に呆れたように酒井正親が重次を窘めた。
「重次よ。未だ殿を餓鬼扱いとは何たることか。斯様な大声も少し控えよ。煩くてかなわぬ」
「……お主のほうが棘のある言い方だのう。わしは世辞を申したまでよ。左様なことより……」
重次は顔をしかめて正親を押しのけ、ずいと家成の前へ踏み込む。その視線は家成の後ろへと向けられている。
「殿っ、その派手な召し物は何でござります! もっと倹約に努めてくだされっ」
「……やはり、すぐに、わしを叱る」
家成の背中ごしに、元康は目を細めてぼそりと呟き不貞腐れた。その横から微かな吐息を洩らして大久保忠世 (ただよ) が、元康を強引に上座へと促した。
「殿。鬼と遊んでおる場合ではござりませぬ。法要の日取りが決まりましてござりますゆえ、仕度を整えませぬと」
「忠世殿……」
「何か?」
「い、いや、何でもござらぬ」
忠世の穏やかな声音に反して表情が冷めていることに、元康はひどく戸惑った。どうにも岡崎の面々とは性に合わない。さっさと墓参して帰りたい。すぐにでも瀬名の顔を見たいと浮かれた端から義元の顔がよぎり、元康はぶるりと身を震わせた。
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