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はっきり口にされずとも義元に命じられ、岡崎衆をまとめてくる、と言いきったような態度に出ていたことを忘れていた……。
「殿、如何されましたので?」
忠世がきょとりと首を傾げて問う。
「何でもない……。あ、いや……何でもある」
まなじりを下げ、言いづらそうにする元康に、忠世はじっと表情を窺うが、重次はいっそう顔をしかめた。
なんとなく元康の抱えているものを推し量る正親は、家成へ目配せした。
「殿。差し出がましくはあるかと思いまするが、名馬が手に入りまして贈り物に如何かと」
家成はのんびりとした口調で言う。その要領を得ない話しに元康は、何の魂胆かと幾分首を傾げながら訊ねた。
「名馬をどこに贈るのだ……?」
「決まっておりまする。足利へ──」
「足……利……。将軍家か!?」
京と近江を行ったり来たりしている将軍家。常に争いに巻き込まれる権力の傀儡。それに馬を贈り擦り寄る──。
「三河岡崎の松平として、殿に野心があるのだとわかれば、皆ついて参りましょう」
補足するように正親が述べた。その声さえ耳に入らぬほど、信じられぬと顔を引きつらせる元康に忠世がこの場にそぐわぬ言葉を投げた。
「鷹狩りでも致しましょう」
と言って元康を連れ出してしまう。
「た……忠世殿っ」
驚きから声を上ずらせる元康が振り返れば、正親たちは何やら談笑しつつ此方に視線を向けていた。
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