第四章

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「本当だ……甘くなって美味しい……」 スプーンを片手にカレーを一口頬張って、誰に言うでもない一人言が十畳ワンルームの部屋にポツリと響く。 テレビから聞こえるドッと沸き上がるような笑い声、水色のカーテンで仕切った窓の向こうは暗い。暖房の温度を低めに設定したクーラー、時折寒さで肩がブルッと震えた。 なんだろう、これ…… 物凄く…… 空しいんですが……。 「っ…………」 よく考えたら私…… 一人暮らしって初めてだもんな。 『コラ、那緒!またニンジン入れなかっただろ~?!』 そう言って叱ってくれた、お父さんも…… 『美味しいよ』 と、微笑んでくれた矢野くんも…… 側にはもういない。 ああ……、なんかもう…… 「っ……駄目だ、寝よ……」
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