第三章

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「お帰り、藤真っ……!!」 紺の鉄製扉を開けて、俺を満面の笑みで迎え入れる柊子は風呂上がりのようでその頬を赤く染めていた。 「いつも、帰りが遅いから私寂しいんだよぉ??」 「……ごめん」 どうして、そんなに何でも無い顔が出来るんだろう。 午後十時きっかり。 この時間に帰宅するよう躾したのは……お前だろ? 「ご飯作ってないんだよね……、出前でも良いわよね??」 「ああ……」 俺の鞄を持ちリビングに足早に戻る彼女の声が遠くなる。 今日のお相手は…… スポーツジムのインストラクター? 随分と近場で済ませたもんだな…… クスッと込み上げた笑みを奥歯で噛み締める。 そうして 靴箱の上、キーケース横に堂々置かれていたジムの割引券をくずかごへと放り捨てた。
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