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第八章 #2
意を決したのはそれから一週間後。
仕事を定時で切り上げ身支度を済ませた俺に、宮我は化け物でも見たような表情を浮かべ言った。
「珍しっ……。どういう心境の変化……?あっ……、まさか……」
「家に帰るだけだ。お前は業務処理頑張れよ?サボった分……たまってんだろうからな」
「ああっ……もう、わかってるっつの!!」
宮我は那緒の職場の人間、きいという女との交際をスタートしたと自慢気に話していた。
心底惚れているのだろう事は、宮我の丸くなった表情、仕事にも身が入らない……といった様子から嫌という程伝わって来る。
初めて他人を羨ましいと感じた。
素直で、恥ずかしい位がむしゃらだ。
「っ……何、笑ってんだよ……さっさと、帰れ!!」
「はいはい」
嫌味だったつもりは無かった。けれど、不意に溢れた笑みは宮我の目に不快に映ったらしい。
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