270人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「ご苦労様ですー。」
終始満面の笑みで手を振る私を、青年は不気味だといわんばかりに時折振り返っては、形ばかりの軽い会釈をし、階下へと姿を消して行った。
見えなくなった瞬間、階段に響くその足音が駆け足に変わる。
やり過ぎだったかな……、でも嬉しかったんだもん。
「っ…………」
クスっと笑みを溢して、振り返り部屋に戻ると……
「何がなおったって……?」
「ちょっと……!何、冷蔵庫勝手に漁ってんのよっ……!!」
冷蔵庫前にしゃがみこんだ藤真が、中からペットボトルの水を取り出し、パタンっとその扉を閉めている所だった。
私の声なんか聞こえていないみたいにゴク、ゴク、ゴク……と、喉仏を小さく揺らす彼に言いたい。
人の話を聞けよ……と。
最初のコメントを投稿しよう!