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ペットボトルの飲み口部分を唇につけたまま、藤真は私の後ろにある荷物に視線を向け、その後、私の全身を睨むような目付きで見上げた。
「……まさか、その格好で出た?」
「え……うん。ごめん、慌てて……借りた」
キュッと強めにキャップを閉めた彼が吐き出す、盛大な溜め息。
何……?ちょっと、借りただけじゃん……
「もうちょっと危機感持てば?お前、女だろ……一応」
“一応”の部分を強調した藤真が、右手に持ったペットボトルで私の太ももをパシッと叩いた。
「っ…………」
痛くはないけど、冷たかった。
それに、藤真が私を女扱いするのも……なんだか変な感じがした。
私……、藤真と……
しちゃったんだよね……?
「何だよ」
「…………別に」
いたって普通な彼に、頬の赤みがバレるのが嫌でそっぽを向く。
窓の外では、近所の小学校の始業を告げるチャイムが流れていた。
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