第十四章

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自動ドアから外に出ると、昼間はカラッと晴れていた空が灰色の雲に覆われていた。 今にも降り出しそうな天気だ。 レンガブロックの壁を数メートル伝い歩き、薄暗くなった駐車場内、ポケットからスターターを取り出した。その時、胸ポケットに仕舞った携帯がその着信を告げた。 登録のされていない番号。それでも、相手の予想はなんとなくついていた。 「……はい」 「もしもし……、私。柊子だけど」 「ああ」 彼女が、突然家を出てからもう五ヶ月が経過しようとしている。 電話越しでも色気を感じるその声に……、どこか懐かしさのようなものを覚えた。
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