244人が本棚に入れています
本棚に追加
自動ドアから外に出ると、昼間はカラッと晴れていた空が灰色の雲に覆われていた。
今にも降り出しそうな天気だ。
レンガブロックの壁を数メートル伝い歩き、薄暗くなった駐車場内、ポケットからスターターを取り出した。その時、胸ポケットに仕舞った携帯がその着信を告げた。
登録のされていない番号。それでも、相手の予想はなんとなくついていた。
「……はい」
「もしもし……、私。柊子だけど」
「ああ」
彼女が、突然家を出てからもう五ヶ月が経過しようとしている。
電話越しでも色気を感じるその声に……、どこか懐かしさのようなものを覚えた。
最初のコメントを投稿しよう!