第十五章

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「お会計はこちらです」 「は、はい……!」 診察終了後、受付カウンターにて、私は慌てて財布をバッグから取り出した。 「橋下さんは薬は飲まれてなかったんですよね?先生から全て破棄して構わないと、言伝てを預かっています」 相変わらず仏のように柔らかい笑みを見せる受付の女性に、小さく頷き返した。 わざわざ言伝てだなんて……、今の今まで会ってたんだからそこで言ってくれればいいのに。 どこか腑に落ちなず、唇を引っ込めた私に気付き、彼女はお釣りを差し出しながら顔を横に傾けた。 「ふふっ。先生に冷たくされました?」 「冷たいって程じゃあないですけど……、用が済んだならさっさとお行きって感じで……雰囲気がいつもと違うのは……確かです」 「皆さんそうおっしゃいます。中にはプリプリ怒って帰られる方もいますよ?」 「そうなんですか……?」
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