第十四章

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応接室を出て、見送りの為受付の前を横切った時、 土井さんは思い出したように足を止め、クルリとこちらに向き直った。 「一之瀬さんね……、隠さなくてもいいよ。コレが……いるんだろう?」 土井さんはそう言って、小指をピンっと立てて見せた。 コレ……つまり、女。 「いえいえ、そんなっ……」 「俺にゃあ、わかるよ?今日の一之瀬さんはいつもより笑顔が多いもの。良いことでも……あったんだろう?」 「…………残念ながら」 ニヤニヤと口元緩くする土井さんに、溜め息混じりの笑顔を浮かべて見せると 土井さんはちぇっとつまらなそうに唇を突き出し、受付のカウンターで受話器を持つ菅原に、軽い御辞儀をしてからまた歩き出した。
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