第十六章

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「それならそうと始めっから言ってよね!?そうしたら、フライパンが丸焦げになることもパスタがくたくたに伸びる事も無かったんだから!!」 「……那緒がそんなに嫉妬深いなんて知らなかったから」 「っ…………!!」 作業台の隣、ベランダ側の窓の下、壁に背をもたれかけて座る私と藤真。 投げ出した足の先には、今私達がいる場所に元々積まれていた段ボール箱。 未開封の空気清浄機とか、電子レンジとか…… 部屋でくつろぐというよりは、会社の倉庫で仕分けをしているあの時の気分に近いものがあった。 「嫉妬じゃないっ……!!」 「へぇ」 「っ……じゃない事も無い……」 「どっちなんだよ」 唇を尖らせうつ向く私の傍らで、余裕たっぷりにふんっと鼻を鳴らしてちゃかす藤真が気に入らない。 いたっていつも通りの空気感。 けれど、僅かに重なる私達の小指と小指。 そこから伝わる熱が温かくて離れたくないのは、この関係が……、前とは違う証。
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