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「頼むから転んだり、足引っ掛けたり……余計な事すんなよ」
「だから、一体何を……」
玄関の扉を開けた藤真の横をすり抜けて、彼の部屋の中へ恐る恐る足を進めると……
壁際には引っ越してから一度も開けていないのだろう段ボールが重ねられ、ビニールがかかった未使用の家具もそのまま。
そして、逆サイドの角。
唯一生活感を匂わせる黒塗りのデスク……というか、広めの作業台の上には屋根のついていない模型や、作業に使用すると思われる細々した道具が散らばっている。
一際目をひく模型の中を、ソッと覗き込んでみると……
「うわっ……これ、花屋さん?!」
階段のように取り付けられた棚の縁は曲線になっていて、その上には私の指先サイズの花瓶が並んでいる。その中にはちゃんと、赤、青、緑……色とりどりの花が添えられ、水切り場のシンクや、カウンターも見て取れた。
今にも店の奥から小さな店員さんがいらっしゃいませ。と、でも言って現れそう。
「そう。今、俺が担当してる横浜の花屋。いつもはもっと大雑把なんだけど……、一号店って事でイメージが湧きやすいように細部までこだわってる」
「へぇ……凄い、綺麗……」
机の上に置かれた電気スタンドの光が、その内部をキラキラと映し出し、いつまで眺めていても飽きる事が無かった。
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