第十六章

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でも…… 「でも、連れ込んだ事には変わりない……でしょ……」 嫉妬心丸出しな台詞を口にして、直ぐに後悔の念に襲われる。 背後に立つ藤真の表情を確認するのが怖くて、拳を握り締めたままうつ向いて硬直。 どうか……、どうか聞こえてしませんように……。サラッと右から左へ受け流してくれますように……。 そんな私の願いを、淡々とした彼の声が打ち砕く。 「お前さ……いい加減認めたら?」 「な、何をでしょうか……」 緊張からか他人行儀な態度をしてしまう。そうしたからって、何も変わらないのに。 「俺を好きだって」 「っ…………」 ボッと頬が熱くなって、手足が震えた。 油断すればまたたくまに……泣いてしまいそう。
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